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打越梨子 in 渋谷
写真:足達奈穂

 文:岡本英之

 2017年5月10日、女優・打越梨子と渋谷の街を歩く。道玄坂を上がり、首都高3号線をくぐって待ち合わせのビルへと向かうと、背筋をピンと伸ばした彼女がいた。はじめて会ったときもそうだった。渋谷の試写室、上映前のロビーに背筋を伸ばして彼女はいた。

 南平台の町を抜けて、旧山手通りの大使館が立ち並ぶエリアに出る。このまま真っ直ぐいくと代官山、そんな話をしながら通りを左に折れ、鉢山町のほうへ向かって歩く。時折足を止め、カメラマンの足達がシャッターを切る。その構図の中、スクリーンの中の打越は全身で躍動している。緊張気味に背筋を伸ばした姿はどこにもない。

 鉢山町交番前の5差路になった交差点、緑地のある落ち着いたエリアには、ちらほらとお店の姿もみられる。交差点を真っ直ぐに抜けて、ぐるりと回るようにして南平台の町へと戻っていく。

 プロフィールに、「16歳で家族とともにバックパッカーを経験、世界一周する。帰国後役者として活動」とあった。気になって話を聞くと、それまではずっと絵を描いていたのだという。油絵を専攻し、絵本作家になりたいとも考えていた。けれど、幼少期にはイマジナリーフレンドと会話をするような神秘的な面を持っていた彼女は、世界一周の旅の最中に不思議な声を聞く。

 「自分に素直になりなさい」

 様々な国の様々な人に出会うことで、人間を表現したい、それも自分自身の身体で表現したいと考えるようになっていた。やがて帰国をすると再び声が聞こえたという。

 「役者をやりなさい」

 とても具体的な声だ。話を聞きながら、その声は彼女自身の決意の声だったのではないかと思う。雨がポツリと落ち始めた。ビルに戻り、階段をのぼる彼女を遠くに眺める。その笑顔に手を振って、渋谷の街に別れを告げた。

打越梨子(うちこし・りこ)

1995年1月20日東京都生まれ。16歳で家族とともにバックパッカーを経験、世界一周する。帰国後役者として活動。近年の主な映画出演作は、『蹄』監督:木村あさぎ(大阪アジアン映画祭2017にて上映)、『アーリーサマー』監督:中村祐太郎、『東京』監督:藤井道人、短編『デリバリー』監督:村中なる美、など多数。

『光と血』

6/3(土)より新宿武蔵野館にて公開中、7/1(土)より名古屋シネマスコーレ、7/8(土)より横浜ジャック&ベティにて公開

公式サイト: http://hikaritochi-movie.com/

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