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氷見市 1
写真・文 熊谷直子

氷見のひと

 東京駅から北陸新幹線に乗り高岡駅でローカル線へ乗り換える。ちょうど下校時間と重なり制服姿と夕陽が眩しい。

 少し進むと海沿いを走り窓からは海しか見えなくなる。こんなにも美しい景色が日常にあるなんて羨ましいなぁと周りを見渡すも、窓に貼り付いて外を眺めるのは私の他観光で来ているであろう年配のおじ様達だけだった。まぁそうだろうな、毎日の眺めであれば食い入るように見ることもないか、と。

 夕暮れ時も過ぎた頃、氷見駅に到着。

 犬の散歩をするひとを見掛けるもまばら。もう一日の終わりがはじまっていて、家で一杯始めているのだろう。

 今回の旅はノープラン、自分達の勘だけを頼りに出会いを求めそのまま中心地まで歩いてみる。

 気になる商店を見付け入ってみた。「田中金文堂」。

 いつぞやの時代にタイムスリップしたような店内。判子屋だ。そこに長く居るであろうおばあさんが判子を彫る機械のスイッチを入れ、静かな空気が一変する。

 とても大きくてゴツゴツとした働き者の手をしていた。その手がいきなり私の手を取り、「結婚は一回だけだね」と。ここではオマケに手相もみてくれるようだ(笑)。

 また少し歩く。暗がりに灯る明かりがひとつ。「はらや」。

 中が見えないけど美味しそうな気配は漂っている。意を決して入ってみることに。

 店内には数々のメニューの短冊が所狭しと貼られており、辛うじて空いていたカウンターに着く。おかみさんとお客さんのやり取りに、地元の方に愛されているのが伝わってきて、ほっと一安心。

 そこで素敵なお二人(克己さん・里美さん)に出会った。近くで飲食店「灘や」を営んでいるというが、この日は週に一度の定休日で夕方早くから飲みに来ているとのこと。そして何と克己さん、鰤解体ショーなどの依頼で全国各地から呼ばれては出向いているそう。

 早くも良い出会いに辿り着いたようだ。良い具合にお腹も満たされできたので、もう一軒この辺りにオススメの飲み屋は無いか尋ねてみた。近くにあるからと、克己さん達に連れて行ってもらうことに。

 「スナック琴音」。いい感じのレトロさのあるゆったりとした店内。

 カウンター席に座る克己さんと里美さん。地元常連の方の姿もちらほらと。

 とても笑顔の素敵なママ(好美さん)と娘さん(外絵さん)。

 何だろうこの安心感、ずっと前から知り合いだった様な気分にさせてくれるこの感じ。克己さん達に連れて行ってもらったからと言うこともあるだろうけど、それ以外にもここには「酒場に必要な条件」が揃っているのだろう。その証拠にいつの間にか満席になっていた。

 克己さん達と出会ったことで氷見の暖かさを存分に感じられたとてもいい夜だった。

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